雨季に入りつつあるはずが、雨がなかなか降らずに猛烈に暑い日がこの数日前まで続いた。ベランダの温度計は日中40度近くまで上がり、何もしなくても頭がふらふらとしてくる。それにしても今年の暑さは、例年に無い暑さのようで、こちらの国の人も「今年は本当に暑い!」と言っているのだから、よっぽどなのだろう。この数日、雨が降り始め、ようやく幾分の涼しさがやってきた。
ある日、現地の牧師と一緒に村に集会に行くとき、トラックの荷台に一緒に乗った。時間は午後2時ぐらいで一番暑い時間帯。暑さでもうろうとしてくる。その時に50代後半の牧師が一言ぽつっとつぶやいた。「ポル・ポト時代はねえ・・・一番暑い今のような時間からわざと外で働かせたんだよ。」
その言葉に心が突き刺さる感じがした。数百万人が虐殺されたポル・ポトの時代。多くの国民を強制労働でも死なせた。この牧師もポル・ポト時代を経験し生き延びた一人。ポル・ポト後にキリストを信じ、牧師になった。しかし、この時代のことをあまり語らない。そして、私もその時代のことをあえて自分から聞くことに今だなお躊躇(ちゅうちょ)を覚える。その時代を生き延びるためには、多くの闇を経験したであろう。ある人にとってその時代とは、自分以外の誰かを殺さなければ、生き延びることのできない時代だったのだ。
トラックの荷台から見る外は、暑さで陽炎がゆらゆらとゆれる。その中での牧師の一言から、かいまみえるポル・ポト時代の悲惨さ。その時代を少しでも想像してみる。死を待つだけの強制労働。何の希望も無かっただろう。その中で、いま私達が宣べ伝えている聖書のことばにある希望を改めて感じる。何という違いなのだろうか。